ダイビング前に一読!減圧症の症状、原因、対策を症例からわかりやすく解説

更新日:2023.04.10.Mon   投稿日:2021.07.05.Mon

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普段は見ることのできない魚の泳ぐ姿や海藻の揺れる幻想的な景色を楽しめるスキューバダイビング。しかしダイビングにはさまざまな危険があり、正しい知識を持ち、しっかりと対策をしなければなりません。そこで今回は潜水病とも呼ばれる減圧症の症状や原因、対策についてご紹介します。

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減圧症の発生頻度は年間1000人ほど

世界的なダイビング団体PADIによると、日本のレジャー・ダイバーは約30万人、その中で減圧症患者の発生は年間約1,000人弱です。このことから、減圧症にかかる確率は軽い減圧症を含めるとダイビング本数2,000~4,000本に1回は発症しているということがわかります。

2,000〜4,000本に1回という確率でも、誰でもなり得る恐れのある減圧症。減圧症になる原因や症状を正しく理解し、適切な対策を行うことが大切です。

出典:PADI「減圧症(DCS:decompression sickness)と減圧障害(DCI:decompression illness」 

減圧症が発症する原因、メカニズム

減圧症の対策を行うためには、減圧症が発症する原因を知る必要があります。ここからは減圧症の原因を2つご紹介します。

減圧症の原因は水中で起こる急な圧力の低下

減圧症は、急な圧力の低下が原因となることが最も多いです。

通常ダイビング中に吸った高圧ガスに含まれる窒素などの不活性ガスは、水深の圧力に応じて体内に溶け込みます。体内に溶け込んだ不活性ガスは浮上による減圧とともに呼吸により排出します。しかし急な圧力の低下により、呼吸による排出が追いつかなくなることがあります。
呼吸による排出が追いつかなくなると、不活性ガスは体内で気泡化し、血管のつまりや組織の圧迫を引き起こします。これが減圧症の原因です。さらに細胞障害や血液が固まりやすくなるなど、二次障害が起こることもあります。

食べすぎ、飲みすぎ、疲れによって起こる可能性も

減圧症は肥満や飲酒、脱水、疲労が原因となることもあります。特にダイビングを繰り返すほど減圧症になりやすく、ダイビングをやめることのできない職業ダイバーは発症しやすい症状です。

趣味としてダイビングを楽しむ人は、潜水中に疲労を感じ息切れがひどくなったら早めにダイビングをやめるようにすることで、減圧症の予防につながります。

減圧症は水深8メートル以上潜ると発症する恐れ

さらに減圧症の発症は水深も関係しています。前述の通り、減圧症は一定量の窒素負荷により発症します。最大深度が8メートル(20〜25フィート)であれば、発症する確率は低くなります。6メートル(20フィート)より浅い深度でのダイビングで発症することはほとんどありません。
なお注意点として、6メートル以下であっても動脈ガス塞栓症は発症する危険性があるので覚えておきましょう。

減圧症の発症するタイミングは潜水した後が多い

減圧症の発症するタイミングは潜水した後が多い

軽度の減圧症は、ダイビング中に発症することはほとんどなく水面浮上後に発症します。米海軍の空気潜水データベースによると、水面浮上後1時間以内の発症率は42%、3時間以内の発症率は60%、8時間以内の発症率は83%、24時間以内の発症率は98%です。48時間後に発症することは少ないですが、症状に気づかず数日後に症状がはっきりすることも稀にあるため注意が必要です。

なお脳や脊髄に症状が現れる重症の場合は水面浮上後すぐに発症することが多く、ダイビング中に発症することもあります。米海軍の空気潜水データベースによると、脳症状の90%は水面浮上後すぐに、脊髄症状の90%以上は水面浮上後4時間以内に発症しています。重症化すると後遺症が残り、最悪の場合死亡するため異変に気づいたらすぐにダイビングを中止し、重症化しないようにしなければなりません。

出典:U.S. Navy Diving Manual. Revision 7, 2016.

減圧症の症状は多岐にわたる

軽症の場合は皮膚や四肢の痛みなどに異変が生じ、重症の場合は神経や脳、肺に異変が生じます。
減圧症は気泡による障害により発症するため、症状は多岐にわたります。ここからは減圧症の症状を軽症と重症に分けてご紹介します。
早めに減圧症に気づけるように、症状を覚えておきましょう。

軽症

軽症の場合は、皮膚に赤みやかゆみ、斑点が生じることがあります。注意すべきなのが斑点です。
斑点が大理石班の場合、重症減圧症の前兆であることがあります。さらに軽症の症状には四肢の関節痛や腫れ、むくみなどもあります。
関節痛は股関節からつま先までの下肢に比べ、肩関節から手指までの上肢の方が発症率は高くなります。なお腰痛も重度減圧症の予兆の場合があるため注意が必要です。

重症

重症の場合は、知覚、運動麻痺、膀胱直腸障害などの脊髄型、意識障害や痙攣、片麻痺などの脳型、胸痛、咳、息切れなどの肺型、目眩や吐き気聴力低下などの内耳型があります。
脊髄型は水面浮上から4時間以内、脳型は水面浮上直後またはダイビング中、内耳型は水面浮上から2〜3時間以内に発症することが多い症状です。なお内耳型のほとんどは約18メートル(60フィート)よりも深い潜水で発症します。

最も良く起こる症状

ここまでご紹介した通り、減圧症の症状はさまざまです。その中で最も良く起こる症状は「気分の落ち込み」です。次いでしびれや知覚異常、頭痛、過度な疲労、吐き気などが挙げられます。

最悪のケース:骨頭壊死

減圧症は最悪の場合、骨頭壊死を起こすことがあります。「骨頭壊死」とは血液が十分に骨に流れず骨の細胞が壊死することです。骨董壊死が起こると「骨頭穿孔術」という手術を受け、骨の再生を活性化させなくてはなりません。

骨頭壊死はすぐに痛みが生じることはありません。痛みは壊死した骨頭が陥没した際に生じ、陥没が大きくなればなるほど痛みも強くなっていきます。骨頭壊死を放置し股関節が変形してしまうと、跛行が生じるなど歩行困難になります。なお「跛行」とは、足を引きずりながら歩くことです。

出典:Vann RD, et al.: Decompression illness. Lancet 2011; 377 (9760): 153-164.

実際の症例、体験談

実際の症例、体験談

さまざまな症状がある減圧症。ここからは実際の症例や体験談をご紹介します。

事例1

まずは南米ペルーでの体験談です。
水深30メートルに生息するムール貝の一種「チョロ」を獲る漁師は、水深30メートルに5〜6時間潜るのが当たり前でした。

とある日いつものようにチョロを捕獲するために潜っていると、突然呼吸用のホースが切れ慌てて水面に急浮上しました。この時の潜水時間は3時間、最大水深は約30メートル。水深30メートルから急浮上すると、肺の中にあるこの圧縮された空気が膨張し肺が破裂してしまう恐れがあります。

水深30メートルから急浮上したことにより、すぐに減圧症の症状である息苦しさとしびれが生じます。さらに両肩と胸が異常ではないほど膨れ上がりました。その後4年たっても症状は改善せず、痛みはなくなりましたが上半身が異常に膨らんでいる状態です。

出典:ザ世界仰天ニュース「一瞬で体重が30キロ増えた謎」

事例2

次に愛知県西尾市のダイビングショップ経営者の体験談です。

ダイビングショップの店員は、一日に数回ダイビングすることも少なくありません。この日も2度のダイビングをしていました。1回目の潜水時間は41分で最大水深は約18メートル。昼食をとり2時間後に2回目のダイビング。2回目は45分、約16メートル。潜水後1時間半経過し車で帰宅中に減圧症を発症しました。症状は左手の脱力と言語障害。左手の力が全く入らず上がらない状態、呂律がまわらない状態でした。その後ドクターヘリで病院に運ばれ、後遺症はありません。

出典:朝日新聞「ダイビングで減圧症 「誰にでも起こる」伝えたい」

事例3

最後はダイビング歴10年のベテランレジャーダイバーの体験談です。
減圧症を発症した日は3回ダイビングを行いました。1回目は最大深度35~41m、潜水時間60分、インターバル2時間。2回目は最大深度 18~35m、潜水時間60分、インターバルを1時間。3回目は最大深度10m、潜水時間45分でした。潜水直後30分で指先のしびれを感じたものの、カメラを持ってダイビングしていたためさほど気に留めていませんでした。

手の痺れを感じてから約22~23時間後に飛行機に搭乗。ダイビングから2、3日経過した頃、徐々に異常な疲労感と指先のしびれが1日数回起こるようになります。異変を感じダイビングから10日後に病院へ行き減圧症と診断されました。高気圧酸素治療を5回受け、疲労感は無くなったものの、足・膝から指先まで痺れが残っています。

出典:ダイコンおじさんの減圧症予防法講座「減圧症に至る経過とその後のダイビング復帰による再発を経験して」その1

減圧症についての対策、心がけるべきこと

減圧症についての対策、心がけるべきこと

減圧症は軽症から重症と症状が多岐にわたるだけではなく、最悪の場合死亡する恐れもあります。減圧症は誰でも発症する確率があり、ダイビング前後に対策をすることが大切です。

最後に減圧症にならないための対策と、心がけるべきことをご紹介します。

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減圧症にならないようにする前後の対策

減圧症にならないためには、ダイビング前後に対策をしなければなりません。

まずダイビング前には過度の飲食は控え、十分な休息を取りましょう。ただし水分補給は適度に行わなければなりません。脱水状態は血液循環の悪化につながり、気泡を肺に運ぶ能力が低下し減圧症を引き起こす恐れがあります。特に脱水による減圧症は、重症化しやすく危険です。水分補給時は塩分などのミネラルとブドウ糖を適度に含む飲料を飲みましょう。ミネラルとブドウ糖を含む飲料水は吸収が速く身体にとどまる時間も長くおすすめです。一方で日本茶や紅茶、烏龍茶などは利尿作用があり、体内の水分を減らしてしまうため不適切です。

また、ダイビング直後は飛行機に乗るのを控えましょう。ダイビング直後は窒素が体内に残っています。窒素が体内に残っている状態で飛行機に乗ると、ダイビング中に急浮上した際と同様の状態になり、体内の窒素が膨張し減圧症になる確率が高くなります。

窒素が体内から完全に無くなるのは18〜24時間後です。つまり窒素が抜ける時間を逆算し、スケジュールを立てる必要があります。水深が深かった場合はさらに時間を開けてから飛行機に乗るようにしましょう。

ダイビング中に心がけるべきこと

ダイビング中も減圧症にかからないように心がけるべきことがあります。
まず最も大切なのが急浮上を避けることです。特に思わぬトラブルがあった場合、慌てて浮上しようとしてしまいます。しかし減圧症の原因のほとんどは、浮上スピードが早すぎたことです。ダイビングには、1分間に18メートル以上の上昇は避けるという規則があります。

また、深い場所や浅い場所を行き来するジグザグしたダイビングを避けるようにし、まずはそのダイビングにおいての最大深度まで行き、その後、徐々に水深を浅くするようにダイビング計画を立てるようにしましょう。
また、1日に複数回のダイビングを行う時は1回目より2回目、2回目より3回目のダイビングの最大深度や平均深度を浅くするようにしましょう。

まとめ

スキューバダイビングは危険を伴うスポーツです。しかし正しい知識や技術を身につけることで、地上では見ることのできない世界を見ることができます。ダイビングスクールでは、初心者でもインストラクターとともに安全にダイビングを楽しめます。減圧症の対策をしっかりと行った上で、ダイビングを楽しみましょう。

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