ダイバーができる海洋保全 PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースとは
更新日:2025.11.15.Sat 投稿日:2025.11.15.Sat
目次

近年、テレビやインターネットなどで「海洋ごみ問題」や「マイクロプラスチック汚染」という言葉を耳にすることが増えました。
これらは、私たちの便利な生活が生み出したプラスチック製品が、形を変えて海へと流れ込み、海の生態系を脅かす地球規模の課題です。
単なる「ごみ」ではなく、生き物の命や、やがては私たち人間の健康にも影響を及ぼしかねない、待ったなしの危機的状況なのです。
「何かできることはないか」と思っても、個人で取り組むには限界があると感じるかもしれません。しかし、私たちダイバーには、他の誰にもできない、海の未来を守るための特別な役割があります。
それは、海中へと潜り、その目で現実を確かめ、直接行動を起こすことです。
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本記事では、PADIのスペシャルティコースの一つである「PADIダイブ・アゲインスト・デブリ(Dive Against Debris)に焦点を当て、このコースがなぜ今、ダイバーに求められているのか、また海洋保全にどのように貢献できるのかを詳しく解説していきます。
海を愛するあなたにとって、このコースが海を守るための行動への第一歩となることを願っています。

なぜ「海ごみ」問題が注目されているのか

私たちが日々使うプラスチック製品。レジ袋、ペットボトル、食品容器、包装材など、その便利さから私たちの生活に欠かせないものとなっています。
しかし、その多くは一度しか使われることなく捨てられ、適切に処理されないまま自然界へと流れ出ています。
年間800万トンものプラスチックが海に流入していると推定されており、このままでは2050年には海のプラスチックごみの量が魚の量を上回るというショッキングな試算も発表されています。
海に流れ着いたプラスチックは、波や紫外線によって細かく砕かれ「マイクロプラスチック」へと姿を変えます。
目に見えないほど小さくなったプラスチックは、海洋生物が摂取してしまう可能性が高く、食物連鎖を通じて生態系の各層に広がります。
魚や鳥、ウミガメなどがプラスチックを誤飲し、消化器が詰まって死に至るケースも後を絶ちません。
さらにプラスチックは有害な化学物質を吸着しやすい性質があるため、それらを摂取した生物は体内に有害物質を蓄積してしまうリスクを抱えることになります。
この問題は、やがては漁獲された魚介類を食べる私たち人間にも影響を及ぼす可能性があり、まさに他人事ではありません。
これまでにも海岸に打ち上げられたごみを拾う「ビーチグリーン」活動は盛んに行われてきました。もちろん、こうした活動も重要です。
しかし、海岸のごみは、海に流れ出したごみ全体のほんの一部に過ぎません。膨大な量のゴミが、水面下で漂流したり、海底に沈んだりしているのです。

特に、漁具やプラスチック製のロープ、ビン、空き瓶、レジ袋、お菓子の袋などは、海底の地形やサンゴの隙間に絡みつき、そのまま放置されてしまいます。
これらは分解されることなく、半永久的にそこに留まり続けます。一般の人が簡単にアクセスできない海底に沈んだごみは、まさに「見えないごみ」です。
しかし、私たちダイバーは違います。私たちは海中へと潜り、その目で海底に眠るゴミの存在を確かめることができます。
そして、ただ見ているだけでなく、ごみを回収し、海を本来の姿に戻すための行動ができるのです。
ダイバーだからこそ気づける、海底のごみ問題。そして、ダイバーだからこそ解決に貢献できること。
それが、PADIダイブ・アゲインスト・デブリが今、求められている理由なのです。

PADIダイブ・アゲインスト・デブリとは?

「PADIダイブ・アゲインスト・デブリ」は、PADIが世界的な海洋保護団体である「プロジェクトAWARE」と連携して実施している、水中ごみに関するスペシャルティコースです。このコースの目的は、単に水中のごみを拾うことだけではありません。
大きな特徴は「水中ごみ回収」と「データ収集」を組み合わせた、市民科学(Citizen Science)の活動である点です。
市民科学とは、専門家ではない一般市民が科学的な活動に参加・協力することで、科学の発展に貢献する取り組みのことです。
PADIダイブ・アゲインスト・デブリコースに参加したダイバーは、水中ごみを回収すると同時に、その種類、数量、場所といったデータを記録します。
このデータは、プロジェクトAWAREの「Dive Against Debris」データベースにアップロードされ、世界中のダイバーが収集したデータと統合されます。

これらのデータは、単なるごみの記録ではなく、海洋ごみの種類や発生源、拡散の傾向を分散するための貴重な科学的資料となります。
実際に、プロジェクトAWAREが収集したデータは、世界各国の政府や研究機関、環境保護団体に提供され、海洋ごみ問題の現状把握や、効果的な政策立案に活用されています。
(参考:Dive Against Debris ごみ分別ガイド)
例えば、特定の地域で特定のプラスチックごみが多いことがデータで判明すれば、そのゴミの使用を減らすための政策を検討するきっかけになることもあります。
PADIダイブ・アゲインスト・デブリは、ただ海をきれいにするだけでなく、地球規模の海洋ごみ問題の解決に向けた国際的な市民科学活動の一環として、私たちダイバーが参加できるプログラムなのです。
ダイブ・アゲインスト・デブリSPコースの内容と流れ
PADIダイブ・アゲインスト・デブリSP(スペシャルティ)コースは、理論的な学習と実践的なダイビングの組み合わせた内容となっています。ある程度のダイビング経験があれば、誰でも参加できるように構成されているのが特徴です。

学科セッション
デジタル教材を使用しながら、事前に海洋ごみ問題の現状について、以下のような内容を掘り下げて学びます。
海洋ゴミの種類と影響
プラスチック、ガラス、金属、漁具など、ごみの種類ごとにどのような影響が海洋生物に及ぶのかを具体的に学びます。特に、生物が絡まってしまうゴーストギア(放棄された魚網や仕掛け)の危険性や、プラスチックが細かく砕かれる過程についても理解を深めます。
水中ごみ回収の歴史と背景
これまでの水中清掃活動の歴史や、PADIとプロジェクトAWAREの取り組みについて学び、この活動の重要性を認識します。
安全なごみ回収の手順
ごみを回収する際の安全確保が最も重要です。ごみの中に危険なものが潜んでいる可能性を考慮し、決して無理をしないこと、浮力調整を保つこと、サンゴや生物に触れないようにすることなど、実践的な注意を学びます。
データ収集と報告方法
回収したごみの種類を正確に識別し、数量を記録する方法を学びます。これらのデータを「Dive Against Debris」データベースにアップロードする手順も学び、自分の活動がどのように国際的なデータベースに貢献するのかを理解します。
実習ダイブ
学科で学んだ知識を、実際の海で実践します。実習ダイブは最低1本を行い、以下の手順で進めていきます。
1.潜水計画
潜る前に、ごみを回収するエリア、担当するバディと役割分担、ナビゲーション、回収するごみの種類などを計画します。

2.水中でのごみ回収
バディと一緒に協力して水中を探索し、見つけたごみを回収します。コースでは、メッシュバックなどの専用ツールを使用し、安全かつ効率的に回収する方法を学びます。水中でごみを拾う際には、中性浮力を保ち、サンゴや岩を傷つけないように慎重に行動することが求められるため、ダイビング自体のスキルも向上する項目です。

3.水面でのごみ分離と記録
ダイビング終了後、回収したごみを陸上で分類し、事前に準備した記録用紙に種類、数量などを正確に記入します。この作業が、その後のデータアップロードの基礎となります。

記録・報告
記録したデータを、プロジェクトAWAREのウェブサイトである「Dive Against Debris」データベースへアップロードします。
世界中のダイバーがアップロードしたデータが集積され、グローバルな海洋ごみマップが作られていく様子を見ることができます。
自分の活動が世界に貢献していることを実感できる、達成感ある瞬間です。
コースへの参加条件
PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースは、オープン・ウォーター・ダイバー、またはPADIフリーダイバー以上、もしくは相当する資格を持っていれば参加可能です。
初心者ダイバーでも受講可能で、環境活動の第一歩として最適です。ダイビングの新しい楽しみ方として検討してみるのも良いでしょう。
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ダイバーに広がる「環境保全」の新しい楽しみ方
PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースは、ダイバーが海洋環境保全に貢献する、新しい「楽しさ」を提供してくれます。
これまでのように、ただ美しい海を眺めるだけでなく、自分のダイビングが「海を守る」という明確な目的を持つことで、ダイビングがより深く、やりがいのあるアクティビティへと変わるのです。

自分の潜る海を守る達成感
私たちが普段潜っているダイビングスポットは、いつまでも美しいままでいてくれるわけではありません。陸上から流れたごみや、捨てられた漁具が、気付かないうちに海底を汚染している可能性があります。
ダイブ・アゲインスト・デブリの活動を通して、自分のホームグラウンドである海を自分で守ることができるのです。海中でごみを発見し、それを回収するたびに、「この海をきれいにできた」という強い達成感と喜びを感じることができます。
レジャーを超えた絆
水中でのごみ回収は、バディや仲間と協力して行うことがほとんどです。一緒にごみを探し、見つけたごみを協力して運び、陸上で分類する。この共同作業は、仲間との絆をさらに深める機会にもなります。
ダイビング仲間と共通の目的を持って活動することで、単なるレジャーを超えた、社会的な繋がりを築くことができるのです。
小さな一歩が大きな変化に
「自分一人でできることなんて限られている」と思うかもしれません。しかし、PADIダイブ・アゲインスト・デブリは、世界中のダイバーが、それぞれの場所で、できる範囲で、小さな一歩を踏み出すことで、やがて大きな変化を生み出すという可能性が秘められています。
一人ひとりが回収したわずかなごみが、世界中のダイバーの活動と合わさって膨大なデータとなり、海洋ごみ問題の解決に向けた大きなうねりとなるのです。
SNSでの情報発信や地域イベントとの連携
ダイブ・アゲインスト・デブリの活動は、SNSでの情報配信にも最適です。回収したごみの写真や、活動中の様子を共有することで、より多くの人々に海洋ごみ問題の現状を知らせ、環境保全への意識を高めるきっかけを作ることができます。
また、地域のダイビングショップや自治体と協力して、大規模な水中清掃イベントを開催するなど、コミュニティ全体を巻き込んだ活動へと発展させることも可能です。

ダイブ・アゲインスト・デブリは、単なるダイビングスキルを磨くコースではありません。海を愛するダイバーが、その愛を具体的な行動に移すための、実践的なツールであり、仲間との絆を深め、社会全体を巻き込むための新しい楽しみ方です。

SPコースを受講するメリットと今後の活かし方
PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースは、ダイビングの技術を向上させるだけでなく、私たち自身の意識や行動を変えるきっかけを与えてくれます。このコースを受講することで得られるメリットは多岐にわたります。
自然環境保護の意識が高まる
コースを通して、海洋ごみ問題の深刻さを肌で感じることができます。プラスチックが海の生態系に与える影響や、私たち自身の生活が海に与えている負荷を具体的に学ぶことで環境問題への関心が深まります。
ダイビング中も、今まで何気なく見ていた海のごみに目がいくようになり、水中ごみを見つけるたびに、それを拾いたいという気持ちが自然と芽生えるでしょう。
海洋保全をテーマにした国際的な活動に参加できる
PADIダイブ・アゲインスト・デブリは、世界中で行われる活動です。コースを修了し、データベースにデータをアップロードすることで、あなたは「グローバルな海洋保全コミュニティの一員」となります。
世界中の仲間と一緒に、一つの地球規模の課題に取り組んでいるという連帯感は、大きなやりがいにつながります。
仕事やボランティアでの活動に活かせる
コースで学んだ知識や経験は、ダイビング以外の場面でも大いに役立ちます。環境問題に関わる仕事やボランティア活動を探している方にとって、このコースは実践的なスキルと知識を身につける良い機会となります。
例えば、地域の環境イベントで水中ごみの問題について講演したり、清掃活動を企画・実行したりする際に、学んだことを活かすことができます。
子どもや地域社会への啓発活動にも役立つ
ダイブ・アゲインスト・デブリの活動を通して得た知見は、次の世代に伝えるべき貴重な経験です。子どもたちに海の美しさとともに、ごみの問題を教え、海を守る行動の重要性を伝えることは、未来の地球を守るために不可欠です。
学校の授業やお祭りなどで、ダイブ・アゲインスト・デブリの活動を紹介し、啓発活動を行うことも、このコースの大きな活かし方の一つです。

まとめ

PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースは、単なるダイビングの技術を学ぶ場ではありません。海を愛するダイバーが、自らの手で身を守り、その活動を通じて国際的な海洋保全の取り組みに貢献できる、実践的な学びの場です。
今、海洋ごみやマイクロプラスチックの問題は、待ったなしの状況です。しかし、この問題に立ち向かうために、私たちダイバーには特別な力が備わっています。その力を「見る」だけでなく、「行動」に変えるきっかけを与えてくれるのがこのコースです。
自分のダイビングが環境保全につながるという喜びは、何物にも代えがたいものです。
美しい海を守るために、PADIダイブ・アゲインスト・デブリSPコースで、海を愛するダイバーとしての第一歩を踏み出してみませんか?
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