ケーブダイビングとは?魅力と注意点を解説

更新日:2023.12.07.Thu   投稿日:2023.11.17.Fri

世の中には、実に多くの種類のダイビングポイントやスタイルが存在します。その中でも奥が深く、また多くのファンを魅了しているのがケーブダイビング。ケーブとは英語で「Cave」と書き、意味はそのまま「洞窟」です。名前の通り、洞窟の中に入っていくダイビングスタイルをケーブダイビングと呼び、特別な訓練が必要なダイビングポイントや危険と隣り合わせの過酷な場所も存在します。

今回は、そんなケーブダイビングの魅力と注意点、訓練方法、おすすめポイントについてご紹介します。普段とは違ったダイビングに挑戦してみたい方、ダイバーだからこそ行ける世界の範囲を広げたい方、必見です。

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ケーブダイビングの魅力

セノーテダイビングの入り口

ケーブダイビングはその名前の通り、洞窟でのダイビングを指します。洞窟であればケーブダイビングと呼ぶこともありますが、一般的に「ケーブダイビング」と言うとテクニカルなスキルや訓練を要する長時間のダイビングを指します。長いところでは片道で数時間かかるようなケーブへ行く、怖いもの知らずのダイバーもいるくらいです。

更に、オープン・ウォーター(海洋環境)でのダイビングと違って、水面に顔をあげることすらできない場所も。ひとたびケーブの中に入ったら、何かトラブルがあっても直ぐには戻ってこられません。ケーブは自然が作り出しているので、まっすぐな道ばかりではありませんし、水面に顔をあげられたとしてもそこもまだケーブなんということも。

ケーブダイビング禁止の看板

このように「ケーブ」とひとくくりに呼んでも、複雑に入り組んでいたり行き止まりや小部屋がたくさんあったりして様々です。それでも、そこにしかいない生き物や別世界のような景色とスリルを求めて、世界中で日々、多くのダイバーが訓練をしています。

真っ暗なケーブ内を「この先にどんな景色があるのか?」と想像しながら、ひたすら進んでいくドキドキ感。入り口や亀裂(クレパス)から入り込むわずかな光。アドベンチャー好きなダイバーにとっては、たまらない空間ですね。

<ケーブダイビングの魅力まとめ>

  • 別世界に連れて行ってくれる感覚を味わえる
  • 危険と隣り合わせの冒険感がある

ケーブダイビングの種類

ケーブダイビングのポイントマップ

ケーブダイビングは、おおまかに2つの種類に分けられています。距離や難易度、専門性によって異なり、それぞれ必要なライセンスも違います。

カバーンダイビング

カバーンとは、「覆われる」と言う意味で、洞窟(ケーブ)と同じ言葉です。短くて簡単な構造のケーブへのダイビングをカバーンダイビングと呼び、特別なライセンスがなくても潜ることが可能です(オープン・ウォーター・ダイバーでも可)

また基本的には、特殊な器材や準備も不要で、伊豆や沖縄にあるちょっとしたケーブをイメージしていただけるとわかりやすいでしょう。基本は、光が差す(入る)ケーブのことを指します。

フルケーブダイビング

フルケーブダイビングはその名の通りすべて覆われたケーブ、かつ専用のライセンスや訓練が必要なテクニカルダイビングのことです。資格を発行している団体は複数あり、代表的なのはTDI(Technical Diving International)、IANTD(International Association of Nitrox and Technical Divers)、PADI Tec Recコースなど。各団体により正式名称や内容が異なります。

カバーンダイビングよりも、危険度や難易度が増すため、専用の器材や知識、訓練が必要です。長い距離では、サイドマウントでシリンダーを2つ以上持って行ったり、呼吸の排気を循環させるリブリーザーを使用したりする場合もあります。教育機関やライセンスによって異なりますが、TDIでは深度40mまでのケーブへのエントリーが可能です。

ケーブダイビングの注意点

セノーテで講習を受けるダイバー

ケーブダイビングの一番の怖さは、トラブルがあってもすぐに帰れないところにあります。通常のダイビングでは、様々な方法ですぐにエキジットすることができたり、最低でも水面に上がったりすることができますがケーブ内ではそうはいきません。数時間かけて出口まで向かうようなケーブでは、何か起きて水面にあがっても、そこはまだまだ真っ暗で電気も電波もないケーブ内…救助を呼ぶことさえ叶わないような、そんな過酷な場所も存在します。

過去の事例として、複数の小さな洞窟内を次々と進み、点在しているエアドームで顔をあげては潜り、上げては潜りを繰り返すような場所へ行ったダイバーの、耳抜き問題がありました。浅い水深で、潜降と浮上を繰り返すのはかなり耳に負担がかかります。途中で痛くても、一回進んでしまったら戻ってくるのにも再度潜降して出てこなければならず、かなり辛い想いをしたそうです。

初心者向けのセノーテは浮上できる

圧平衡が上手くいかないことで、頭痛や吐き気、めまいなどを誘発するケースもありますし、そこからパニックにつながる恐れもあります。最悪の場合、後遺症を患ってしまい、二度とダイビングができないなんてことも。そのようなことが起きないように、様々なトラブルへの事前準備や対処方法を学ぶことが大切です。元より、トラブルを回避または最小限に抑えるようトレーニングをしなければ危険です。

<ケーブダイビングの注意点まとめ>

  • トラブルがあっても元に戻るまでに時間がかかる
  • 場合によっては後遺症にもなりうる

苦手な方は必見!ダイビング時の耳抜きのコツと方法を解説

ケーブダイビングの体験におすすめのポイント

ケーブダイビングは水中ライトの予備が必須

初心者向けから上級者向けまで、いくつかのケーブダイビングのポイントをご紹介します。また、ケーブ(主に横穴)とホール(縦穴)の違いについても解説します。

まずは、ケーブとホールの違いは、入口の位置です。横に穴が空いているのはケーブ、縦に穴が空いている空間をホールと言うことが多いです。そして、ケーブダイビングの中には前記した通り、カバーンとフルケーブがあります。ダイビングポイントの名称としては、そこまで細かく厳密に名付けてはいないので、カバーンをホールと呼んだり、ホールをケーブと呼んだり様々です。

魔王の宮殿(宮古島)

魔王の宮殿でケーブダイビング体験

宮古島にある大人気ポイントのひとつ「魔王の宮殿」は、その名の通り部屋(ホール)が複数あり、魔王が住んでいそうな幻想的でパワーを感じるポイント。各部屋と部屋が通路で繋がっていて、それぞれ上から光が差し込んでおり、青白く光っています。最大深度25mほどなので、アドバンス以上のライセンスが必要ですが、ホールの中は穏やかで難易度としては高くありません。カテゴリーとしては、カバーンに属するタイプのケーブです。

雲見(西伊豆)

雲見でケーブダイビング体験

西伊豆の大人気ポイントと言えば、雲見(くもみ)のケーブポイント「牛着岩(うしつきいわ)」です。大きな2つの岩(大牛と小牛)がそびえ立ち、その隙間が水路になっています。クレバスから入るルートや横穴から入るルートなど、コース取りによって様々な顔を見せるこの場所は、何度でも通いたくなる魅力が満載。また、途中で顔をあげられるエアドームもあり、ケーブ内部から大海原を眺めることができます。

辺戸岬ホール(沖縄本島北部)

辺戸岬ホール

ドリフトダイビング×ケーブダイビングのポイント。崖の中に世界的にも珍しい海底鍾乳洞(宜名真海底鍾乳洞:ぎなまかいていしょうにゅうどう)があり、数万年前から少しずつ作られてきた無数の鍾乳石が垂れ下がっています。洞窟の入り口は水深12mほどのところにあり、真っ暗なケーブ内へ水中ライトを手に進んでいきます。奥には、エアドーム(縦横10m×50m程度)があり、数万年の歴史を感じることができます。旧石器時代の石器が発見された場所としても有名です。

セノーテ(メキシコ)

セノーテでケーブダイビング体験

言わずと知れたダイビングのメッカメキシコにある“セノーテ”は、カリブ海の「ユカタン半島」にあります。ここの地下へ長い時間をかけて雨水が流れ込むことで空洞ができ、ユカタン半島全域を結ぶ最大級の水中鍾乳洞ができあがりました。この、陥没した穴に地下水が溜まった天然の井戸や泉のことを「セノーテ」と呼んでいます(実は、ダイビングポイント名ではありません)

セノーテはわかっているだけでも約5,000か所以上あるとされており、実際は1万個所以上にも及ぶのではないかと言われています。ケーブ状になっているセノーテから、オープンセノーテと呼ばれる天井が覆われていない湖のような場所もあります。

ホールからカバーン、フルケーブまで様々なスタイルのダイビングを楽しむことができる場所です。

ケーブダイビングの訓練方法

ケーブダイビング用のダイブコンピューター

ケーブダイビングをするにあたって、特別なライセンスや訓練が必要です。その内容は、どのような場所や状況でケーブダイビングをするのかによって異なります。フルケーブダイビングでは、タンクの本数や装着方法、バックアップ器材の数や種類など、通常のダイビングとはかなり違います。指導団体も様々ありますが、中でも有名なのは世界最大のテクニカルダイビングの指導団体TDIです。

カバーンダイバー

カバーンダイビングは通常のダイビング装備で行けるため、特別なライセンスや訓練は不要です。しかし、通路や入口が狭くなっているポイントも多いため、岩や海底についている生物や生え物を傷つけないためにも、中性浮力は練習した方がよいでしょう。また、カバーンダイビングの専門知識を事前に学ぶことで、洞窟内での適正なテクニックや知識、トラブル対応を身につけられるのでおすすめです。

学科、プール、海洋実習があり、最低日数は4日間で費用は約120,000円〜180,000円です。

イントロケーブダイバー

イントロケーブは、カバーンの範囲を少し超えて光が届かない場所まで行くダイビングです。そのため、進んでいる方向や位置が分からなくならないように、ライン(リール)に沿って進むトレーニングが必要になります。更に、目を閉じた状態(視界が失われた状況を想定)でのマスク脱着やバックアップ空気源の使用などのトレーニングも行います。ダイビングの装備も通常の器材に加えてバックアップ用が必要になりますので、カバーンダイビングを超えたレベルになります。

学科、海洋実習があり、最低日数は2日間で費用は約120,000円〜140,000円です。

フルケーブダイバー

これまで紹介してきた通り、フルケーブダイビングとは最難関のケーブダイビングです。高度なケーブダイビングプランの作成やタイプごとのケーブの知識と経験、遭遇するトラブルを想定したシナリオトレーニングなど、高度な知識と技術を学びます。フルケーブダイビングは、毎年事故者も出るほどに危険なダイビングです。特殊な訓練を受けたダイバーだけが見られる世界への、特別なライセンスとなります。

学科、プール、海洋実習があり、最低日数は4日間で費用は約180,000円〜230,000円です。

まとめ

ケーブダイビングで見れる鍾乳石

ケーブダイビングは危険と隣り合わせですが、それを超える探検や冒険の魅力が満載です。ケーブのタイプによっては専門の訓練や器材が必要ですが、日本国内のダイビングスクールでコースを開催している場所がいくつかあります。

ケーブダイビングの最高峰と言えば、誰もが一度はあこがれるセノーテ。しかし、メキシコまで行かずとも伊豆や沖縄にもケーブダイビングのポイントがいくつかありますので、アドベンチャー好きの皆様はぜひ一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。開けたエリアを潜るのとは、また違ったテクニックを身に着けることにもつながります。

ダイビングライセンスを取得したばかりの方は、まずは宮古島の魔王の宮殿や西伊豆の雲見で洞窟ダイビングの経験を積み、自分がどこまでの冒険にチャレンジしたいのかを考えてみましょう!

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