神子元島でのダイビングで出会うハンマーヘッドシャークの世界

更新日:2024.02.28.Wed   投稿日:2024.02.28.Wed

神子元島といえば、ハンマーヘッドシャークや回遊魚などの大物が群れることで有名です。そのため、国内外問わず多くのダイバーが一度は潜りたいと憧れる魅力溢れる海域となっています。

また、2015年には世界有数の海洋生物学者がハンマーヘッドシャークの生態調査を行うなど、世界的にも注目を集めています。

一方で水面下に岩礁や暗礁が多いうえ、潮流も激しく複雑なため、古くから海の難所としても知られてきました。そのため、神子元島でダイビングするためには、ある一定以上のダイビング本数を満たしていることや事前に準備を整えることが必要になります。

そこでこの記事では、神子元島でのダイビングの魅力から始まり、アクセスや宿泊施設、潜る前に知っておきたい情報、安全対策についてなどを一挙にご紹介します。

ぜひ安全に楽しくダイビングするためのガイドラインとしてお役立てください。

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神子元島ダイビングの魅力を知ろう

神子元島の灯台

神子元島とは、南伊豆の弓ヶ浜から約8km沖合にある小さな無人島です。周辺の海域は黒潮の影響を受け、多種多様な生き物で賑わっています。

また伊豆半島屈指の透明度を誇ることでも知られています。この章ではそんな神子元島でのダイビングの魅力を、大きく3つに分けてご紹介します。

ハンマーヘッドシャークとの遭遇チャンス

ハンマーヘッドシャーク

「神子元島の魅力といえばハンマーヘッドシャーク」と言われるほど、ダイバー達に愛されるサメ。

頭部がハンマー形の変わった見た目をしており、英名ではハンマーヘッドシャーク、和名ではシュモクザメ(金を叩くT字型の撞木が由来)と名付けられています。

神子元島のハンマーヘッドシャークは水温が上がる夏から秋にかけて見られるチャンスがあります。

単独の時もありますが、数百の群れになって泳ぐ姿は海に流れる大河のようで「ハンマーリバー」と呼ばれ、まさに圧巻の光景です。

神秘的な地形と豊かな海の生物たち

平坦な地形が続いたかと思えば急にリアス式海岸のように複雑に入り組み、水深40mまで垂直に落ち込むドロップオフが現れたり、大小様々な根が点在するポイントがあったりと、ダイナミックな地形がダイバー達の目を楽しませます。

また、先述したように神子元島周辺は黒潮の恩恵を受けているため、カンパチ、ヒラマサ、ブリなどの回遊魚や、アカエイ、トビエイなどの大物、更にはチョウチョウオやモンガラカワハギといった季節回遊魚まで、紹介しきれないほどの魚種が生息しています。

さらに、ジンベエザメやマンボウとの奇跡的な出会いも期待できます。

神子元島のマンボウ

個性溢れるダイビングショップとサービス

神子元島では全てボートエントリー、中流を流すドリフトダイビングが主であり、難易度の高いダイビングエリアとなっています。

そんな神子元島のガイドをメインに運営しているダイビングショップは、高水準のダイビングスキルと安全管理を徹底しており、利用するダイバーが安心して神子元島でのダイビングを行うための土壌をしっかり築き上げています。

また、ショップが運営する宿泊施設も多く、ダイビング前後もゆっくり快適な時間を過ごすことができます。

ハンマーヘッドシャークだけではなく、豊かな生物層を育む神子元島。それだけでも十分魅力的ですが、安全に、そして安心してダイビングを行うため熟練の船長やガイドが揃ったダイビングショップがあり、さらにその魅力を増しています。

さて、次の章では神子元島へのアクセスと宿泊施設をご紹介します。

神子元島のアクセスと宿泊施設

伊豆急行電車

ここからは、神子元島へ向かうまでのアクセスとおすすめの宿泊施設について紹介していきます。

東京からのアクセス方法と所要時間

 

電車

新幹線

ルート

東京→熱海
(JR)
熱海→伊東
(JR)
伊東→下田
(伊豆急)
東京→熱海
(新幹線)
熱海→伊東
(JR)
伊東→下田
(伊豆急)
自宅→
集合場所→
現地サービス
所要時間 約2時間30分 約3時間40分

約3時間30分

※あくまで目安とし、現地へ向かう際はご自身でも今一度検索してください。

電車で行く場合は乗り換えがあるので、ダイビング器材は事前にショップへ送っておくか、キャリーケースで持ち運びしましょう。

ただ、往復の送料や駅内移動時の階段等を考慮すると、車に荷物を積んでいくことがおすすめです。

ただし、車で向かっても、東京から現地サービスのある下田までは時間がかかってしまうため、ダイビング当日の早起きがちょっと辛い、前日はゆっくり休みたい!という方は前泊することをおすすめします。

南伊豆周辺のおすすめ宿泊施設

南伊豆の弓ヶ浜

①神子元ハンマーズクラブハウス

(1名3,500円/泊〜)
ダイバー専用の宿泊施設。Wi-Fi環境はもちろんの事、コーヒーマシンや熱湯の設置、脱水機などを取り揃えている。伊豆急下田駅から無料送迎あり。

②民宿 辰丸

(1名3,850円/泊 ※メンバーの場合500円引)
神子元マリンサービス併設の宿泊施設。団体向けに2階建てロフト付きの離れがある。伊豆急下田駅から無料送迎あり。

③神子元ダイバーズクラブハウス

(1名3,850円/泊 ※メンバーの場合500円引)
ダイバー専用の宿泊施設。ロギングスペースや、ウッドデッキなど、共有スペースが充実しており、他のダイバー達と交流をしながらゆったりとした時間を過ごすことができる。伊豆急下田駅から無料送迎あり。

④民宿のなか

(1名3,500円/泊〜)
素泊まりのみ、各ダイビングショップへのアクセスが良い。コンビニ、飲食店へも徒歩圏内。

⑤らいずや

(1名3,900円/泊〜)
弓ヶ浜温泉に入れる素泊まり宿、広々とした共有キッチン、BBQスペースの無料貸し出し(1日限定3組)などを行なっている。
電車で行く場合は、無料送迎してもらえるダイビングショップ併設の宿泊施設がおすすめです。

車で行き、ダイビング後にゆったりとした時間を過ごしたいという方は弓ヶ浜周辺の宿を予約すると良いでしょう。

ダイビングツアーの予約と要件・安全対策

ドリフトダイビングのダイバー

アクセス方法と宿泊施設を決めたら、いよいよ神子元島ダイビングに参加するツアーへの予約です。ですが、どのショップを利用するか迷っている方は多いのではないでしょうか。

ここでは大きく分けて2種類のダイビングツアーへの参加方法をご紹介し、どちらがご自身に合っているか比較できるようにしました。また、予約時の要件・安全対策についても記載してあるので、チェックしてダイビングに臨んでください。

2つのツアー予約方法と料金比較

①都市型ショップが開催するツアー

1つ目は普段から利用している都市型ショップが開催するツアーに参加する方法です。いつもダイビングを共にするインストラクターと潜ることで、不安を和らげる助けになるでしょう。

また、自宅付近のショップから現地へ車で送迎してもらえるというのも大きなメリットです。

【ツアー料金】

・2ボートダイブ 約35,000円
・3ボートダイブ 約45,000円

上記ツアー料金は一例ですが、ショップから南伊豆への往復送迎、既定のダイビング、現地施設使用料、前泊の場合の宿泊などが料金に含まれているケースです。

②現地ショップが行うツアー

2つ目は現地ショップが開催するツアーに参加することです。神子元の海に毎日潜っているガイドは誰よりもその海に精通しており、ハンマーヘッドシャークの遭遇率は必然的に高くなります。

また、移動費は自己負担になりますが、ダイビング料金は比較的安価に抑えることが可能です。

【ツアー料金】

・2ボートダイブ 約21,000円
・3ボートダイブ 約31,000円

また、各ショップでメンバー価格を設定している場合もあるため、さらにコストを抑えることができます。

初めての神子元で不安があるという場合は①、どうしてもハンマーを見たい!という気持ちが強ければ②というように、ご自身の利用シーンに合わせて予約すると良いでしょう。

要件と安全対策

上から見たハンマーヘッドシャーク

神子元島でのダイビングは「神子元ダイバーズ協議会」が定めたローカルルールが存在します。この要件を満たさないダイバーは、神子元島でのダイビングができないため注意してください。また、ダイビング時の安全対策についてもルールがあります。合わせてチェックしておきましょう。

〈要件〉

  • 各指導団体でアドヴァンスド・オープン・ウォーター・ダイバー以上のライセンスを所有し、30本以上の経験本数がある(ショップによっては50本以上)
  • 半年以上のブランクがない

〈 安全対策〉

  • レスキューフロート、SMB、ホイッスル、ブザーなどの鳴り物必携
  • 漂流事故防止の為、潜水時間(安全停止時間を含み水面に浮上するまで)は40分以内
  • グループ内の誰か一人でも残圧70になったら全員で浮上開始すること
  • 水面下での船との接触を防止する為、フロートを上げながらの安全停止が義務付けられている
  • 基本的にガイドなしのセルフダイビングは禁止
  • 万が一はぐれた場合は水中で待つことはせず、安全停止もせず、浮上速度を守りながら浮上。水面で再集合するようにする。その際、浮力確保は確実に。

上記の要件並びに安全対策について見落としがあった場合、重大な事故につながる可能性があります。しっかりと目を通し安全にダイビングを行うための準備をしておきましょう。

神子元を潜る前に知っておきたい情報

ここからは神子元島でのダイビングがより楽しみになる情報として、ダイビングポイントをマップでご紹介します。

さらに季節ごとの水温や必要な装備、ドリフトダイビングで必要なスキルについても記載したので、万全の体制で神子元島ダイビングに臨む最終チェックにご活用ください。

神子元島のダイビングポイントマップ

神子元島のダイビングマップ

・江ノ口

「神子元島のスタンダード」とも言えるポイント。平均水深は20m前後となっています。

西側に「カド根」と呼ばれる大きな根があり、そこで根待ち(根につかまり他のダイバーを待つこと)をして、その場で浮上するパターンが基本的なダイビングスタイルです。回遊魚が高確率で見られます。

・カメ根

ハンマーヘッドシャークほか、メジロザメ遭遇率NO.1のポイント。また、ワラサやカンパチといった回遊魚の魚影も多く見られます。平均水深は20m前後となっています。

下り潮と上げ潮の影響を受け、南北に根が連なることで潮が微妙に変化するため魚影が濃いことで知られています。

エントリーポイントから南に出てゆき、中層を流しながら浮上するダイビングスタイルが多いです。

神子元島のハンマーヘッドシャーク

・青根(ジャブ根)

神子元島にあるポイントの中でも特にダイナミックな水中景観をしており、大小様々な形の根が点在している様は一見の価値あり。

平均水深は20m前後となっており、中層を移動しながら浮上するダイビングスタイルが多いです。

地形だけでなく、カメ根同様に魚影が濃く、ワラサ、カンパチなどの回遊魚の他に、ハンマーヘッドシャークやメジロザメの遭遇率も高いポイントです。

・白根

カメ根、青根とは対照的な白砂・ゴロタ混じりの平坦なポイントです。平均水深も18mと他のポイントよりやや浅め。

地形の雰囲気から初心者向けの印象ですが、流れる時には相当速い潮が流れ込むため注意が必要です。

エントリーポイントから北に出てゆき、中層を流しながら浮上するダイビングスタイルが多いです。冬から春にかけて、ネコザメやカスザメが見られます。

神子元のタカベ

・三ッ根

水面に3つの根が突き出しているポイント。平均水深は20m前後で、20〜28mまでは比較的平坦ですが、それ以降は複雑に入り組んだ地形が現れ、水深40mまで垂直に落ち込む圧巻のドロップオフが見られます。

ドロップオフにはメジナやイサキなどが密集していることも。透明度が良いと底まで見渡せるため、より一層浮遊感を味わうことができます。

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時期ごとの水温と適切な装備

南伊豆のサンセット

〈4月〜5月〉

水温:15〜18℃
暖かい陽気が多くなります。ダイビングの装備としてはドライスーツを利用しインナーで調整するのがおすすめです。個人差もありますので6.5mウェットスーツもしくは5mmウェットスーツにフードベスト、5mmの2ピースでも。

〈8月〜9月〉

水温:〜28℃
夏〜秋に季節が変わりはじめると徐々に北東の風が吹き始めます。海中はウエットで快適に過ごせるでしょう。状況によってはフードベストも必要です。9月も中旬になれば船上では軽い防寒が必要となってきます。

〈10月〜11月〉

水温:28〜25℃
北東の風が多くなるシーズンです。船上では徐々に防寒対策が必要となってきます。ダイビングスーツも衣替えの時期が近づきます。

〈12月〜3月〉

水温:15℃前後
西高東低の冬型の天気図が多くなり、西風シーズンの到来。しっかり防寒対策を行なってダイビングに臨みましょう。

ドリフトダイビング時に必要なスキル

伊豆ボートダイビング

神子元島でドリフトダイビングを行う際に必要なスキルは大きく3つに分かれます。

①スムーズに器材準備、ジャイアントエントリーが行えること

神子元島でのダイビングの特徴として、ボートがポイントに着いたらダイバーは速やかに器材を背負い、ジャイアントエントリーし、そのまま潜降を開始します。

理由としては、潮の流れが早いため水面で次に海に入るダイバーを待つことが危険だからです。そのためガイドの手助けがなくても、自分で器材を背負い、素早くエントリーできるスキルが求められます。

②フリー潜行を行えること

通常であればBCに空気が少し入った状態から潜行しますが、ドリフトダイビングにおいてはBCの空気をきっちり抜いておきます。水面でBCの空気を抜いている間にどんどん流されてしまうからです。

初めてのドリフトダイビングで水面に浮く時間が取れないことは不安に感じるかもしれませんが、ロープなど捕まるものがない中でスムーズにフリー潜行を行うスキルが必要となります。

③中性浮力を取れること。自身でダイコンの管理ができること

ドリフトダイビングでは中層を潮の流れに身を任せて移動するのですが、その流れも一定ではありません。常に流れの緩急が変わる中で移動しなければなりません。その際に必要になるのが中性浮力で深度を一定に保つことです。

もちろん根につかまったり、岩の間を泳いだりすることもありますが、浮力を一定に保つスキルはドリフトダイビングにおいて必須となってきます。

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また、自分自身で行う安全管理として、ダイブコンピューターをチェックして減圧不要限界を守ることができる必要があります。

ダイビングスキルを向上させることは、神子元島に限らず特殊な環境でのダイビングを行う際、自分の命を守る一助となります。また同じくらい重要なのが、ガイドの言うことをきちんと守り、ガイドから離れないようにすることです。

有事の際、必ずそのことが伝わる位置にガイドがいるように心がけましょう。

まとめ

ハンマーヘッドシャーク

いかがだったでしょうか。今回はハンマーヘッドシャークと遭遇できる神子元島について紹介しました。世界からの注目を集める魅力溢れる海域でのダイビングは、全ダイバーの憧れです。

しかし、神子元島でダイビングするためには、特定の要件を満たしていることや、事前に情報を集め、準備を整えることが必要となることがわかりました。

これから神子元島でのダイビングを検討されている方は、ぜひこの記事を参考に安全に潜る方法や注意事項を理解して、心に残る楽しい思い出を作ってきてください。

ダイビングスクールマレアでは、神子元島を潜るために必要な知識とスキルを身につけるために「ドリフトダイビング・スペシャルティコース」を開催し、経験本数が50本を超えてPADIマスタースクーバダイバーを取得した方を対象に、チームのレベルを揃えてハンマーヘッドシャークを見に行くツアーを毎年開催しています。

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