初心者ダイバー脱却!ダイビングでエア消費量を減らすには

更新日:2024.03.26.Tue   投稿日:2024.03.26.Tue

ダイビングを始めたころ、インストラクターはなぜこんなに長い時間潜っていられるのだろうと感じたことはないでしょうか。それにはエアの消費量が大きく関係しています。

エアの消費量を抑えることでより長く水中での時間を楽しむことができます。

また、ダイビングでエア消費量を抑えられるということはムダのない動きができている証拠であり、初心者から中級者、上級者になるための目安になります。

この記事ではダイビングのエアを多く消費してしまう原因を紹介し、解決方法を紹介します。

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空気消費量を確認しよう

初心者、プロに関係なくスキューバダイバー(以下、ダイバー)にとって、空気の消費量はとても気になるもの。

スキューバダイビング中の空気の消費量は計算できるので、あなたが平均的にどれくらい消費し、何分潜れるのか、ぜひこの機会に把握してみてください。

ダイバーとタンク

空気消費量とは?

名前の通り空気を消費する量で、算出することが可能です。

ただスキューバダイビング(以下、ダイビング)の場合は水深によって変化するため、ダイビングで空気消費量を算出する場合には、後述する水面空気消費率が必要です。

空気消費量の目安は?

空気消費量は個々人の肺活量やダイビングスキルによって変わり、「L(リットル)/分」という単位で表します。

例えば15L/ 分は、1分当たり15L空気を消費するということです。

空気消費量は男女で異なる

空気消費量は肺活量で異なり、平均的に男性は13〜15L/分、女性は10〜12L/分と言われています。

女性より男性の方が比較的肺活量が多いため、空気消費量は男性の方が多くなります。

女性ダイバー

ただ、ダイビングスキルや使用しているダイビング器材によっても異なるため、男女の差はあくまでも目安として頭の片隅に入れておいてください。

例えば、現役のダイビングインストラクターに聞いてみると、小柄な男性や細身の男性は12L/分になることが多いです。

水面空気消費率を確認しよう

ダイビングで空気消費量を確認する時にセットで必要なものが、水面空気消費率です。

水面空気消費率は「SAC」とも呼ばれます。Surface Air ConsumptionもしくはSurface Consumption Rates(水面消費率)の略で、大深度や長距離の洞窟を潜るテクニカルダイビングで多用する言葉です。

どの水深で呼吸しているかで消費量が異なるため、安全管理のためには各ダイバーがダイビング計画に組み込むことが重要です。

では、どのように算出していくのかをみていきましょう。

ダイバーと泡

水面空気消費率を確認する

水面空気消費率は、過去のログデータを見ることでダイバーが水面を基準にどれくらい空気を消費したかということが算出でき、提案される(もしくは自分たちで計画する)ダイビングプランで、個々人にとってどれだけエアが持つのかを計算することができるようになります。

水面空気消費率は、以下の式で算出します。

水面空気消費率(SACレート)の式

ちょっと諦めたくなるような式が出てきましたが、びっくりするほどサクッとわかりますのでご安心ください。

わかりやすくここでダイバーのA子さんに登場してもらいます。

以下、とある日のA子さんのダイビングです。

ダイビングログで空気消費量を計算する

平均水深が8mの場合、最大水深15mくらいのダイビングポイントを潜っていることが多いです。よくあるファンダイビングの水深ですね。

この場合、空気消費量[L/分]は…

120(消費したエアの量)×10L(シリンダーの容量)÷1.8ATA(平均水深8mの絶対気圧)÷30(潜水時間)

=22.2L/分 

A子さんのダイビングは1分間に約22Lの空気を消費する、ということです。やや消費量が多いので、中性浮力がうまく取れていないビギナーダイバーさんかもしれませんね。

さて、絶対気圧1.8ATAという、ナニコレ?な表記が出ました。

絶対気圧(ATA)というのは水中であなたにかかる圧力のことで、水圧+大気圧です。

ここでCカード取得時に学んだはずのオープンウォーターダイバーの学科講習をおさらい。

ダイビングで習う絶対気圧の式

水圧は10m毎に1気圧がかかり、大気圧は1気圧、

上記の平均水深8mで絶対気圧を算出してみると
8m÷10(水圧)+1(大気圧)=1.5ATとなります。

潜水可能な時間を確認する

それでは、A子さんの水面空気消費率とダイビングプランを元に潜水可能時間を確認していきましょう。

まず指定の水深で消費される空気量を出します。

水深8mで消費する空気の量は…
22.2L/分(水面空気消費率)×1.8ATA(絶対気圧)=39.96L/分

次に、消費できる空気の量を出します。

シリンダーの量は10Lですが、残圧を70bar残して浮上するとして…

130bar×10L=1300L

1300Lの空気を使用できるということですね。

使用できる空気と実際に消費する空気の量で、潜水可能時間を出します。

毎分39,96L、空気を消費していくので、

1300L÷39.96L/分=32.5325325…分

潜水可能時間の計算

ここで注意してもらいたいのが、あくまでも過去のデータを参考にした空気消費率の計算であって、ストレスや緊張で呼吸が速くなってしまった場合は計画通りにいかない不測の事態となります。

また、この潜水可能時間は体内に取り込まれる窒素は考慮されていません。空気消費率は大体の目安であり、実際のダイビングではしっかりダイブコンピューターの安全潜水時間にも従いましょう。

エアを早く消費するダイバーとは?

エアを早く消費するダイバーは考えられる要因がいくつかあり、克服することができます。

まずは要因について見ていきましょう。

ダイバーたちの泡

中性浮力がとれておらず、運動量が多い

中性浮力が取れていないと、水深を維持するためにより多くのフィンキックをしてしまうため運動量が多くなり、エアの消費に繋がります。

またフィンキックを多くすることで、身体が立ち気味になり水の抵抗が大きくなり、さらにフィンキックを頑張るという負のスパイラルに陥り、結果的により多くエアを消費してしまいます。

呼吸法が身についていない

「ダイビングの呼吸は大きくゆっくりと」
この基本を忘れがちなダイバーは多いです。

エアを消費したくない、残圧がなくなったらどうしようという心理から浅い呼吸になってしまいます。

しかし浅い呼吸は苦しさを感じてしまい、深い呼吸よりもエアを消費しがちになります。

更に頭痛などの原因にもなりますので、浅い呼吸はやめましょう。

他のダイバーより行動量が多い

中性浮力が取れていない、バランスが悪い等でバタバタしてしまうダイバーや、サメやマンタなどの大物を発見して一目散に向かってしまうダイバー、ガイドから離れてしまうダイバーが当てはまります。

後者はエア切れの心配だけでなく、水中での行方不明やせっかく集まった魚を散らしてしまう原因になり、他のダイバーの迷惑になる可能性が高いので控えましょう。

使用しているスーツ・器材が合っていない

意外に思われがちなのが、器材が合っていないことがエアの消費が多くなる原因になるということ。

例えば、ぶかぶかのダイビングスーツやインナーだと寒さを感じ、より呼吸が早くなり、エアの消費に繋がります。

BCDが合っていないと中性浮力が取りづらく、フィンが自身の脚力に合っていないとより体力を使ってしまい、どちらもエアが消費されやすくなります。

【BCDの詳しい選び方はこちら】
ダイビング器材で重要なBCDの選び方と使い方を紹介!

また、レギュレーターの種類や調整によってもエアの消費が早くなるものがありますので、購入する時は価格や吸い心地だけでなく、エア消費量についてもダイビングショップのスタッフに相談してみましょう。

【レギュレーターの詳しい選び方はこちら】
ダイビングにはレギュレーターが必須!選び方やメンテナンス方法を解説

エアを節約するコツとは?

上述にもありますが、呼吸は大きくゆっくりと行い、浅い呼吸は避けましょう。

もし浅い呼吸がクセになっている方は、ダイビング中にまずは吸うことより吐くことを意識して呼吸してみてください。そして慌てずゆっくりと。

最初はぎこちないですが、慣れてくると正しいスキューバダイビングの呼吸法が身につき、自ずとエアの消費や中性浮力の心配がなくなっていきます。

ウエイトを適正に身に付け、中性浮力をマスターする

適正なウエイトを着用することも、エア消費の削減に繋がります。

ウエイトが適正でないと、BCDへの給排気を頻繁に行い、無駄なエアを消費してしまいます。

特にオーバーウエイト(適正量より重いウエイトを身につけること)の場合はフィンキックが多くなり、疲労とエア消費の原因になり、歩きづらいことで陸での怪我や転倒の可能性も高くなります。

オーバーウエイトは潜降しやすいですがメリットはそれだけなので、初心者の時から適正なウエイトに慣れましょう。

【適正ウエイトの確認方法はこちら】
タンク・スーツが左右する!ダイビングの適正ウエイトを知ろう

自身の適正ウエイトで中性浮力を身につけ、無駄な動きをなくすことで、無駄なエア消費を抑えることができます。

余裕があるダイビング環境の際は、初心者でなくても適正ウエイトを確認してみてください。

エアの消費量の削減やスキルアップ・知識アップに繋がり、より気持ちに余裕のあるダイバーになれますよ。

器材を正しく使用する

無駄な動きをしてエア消費をしないよう、ダイビング器材は正しい位置に装着することが必要です。

陸ではバディと共に各器材の装着位置がズレていないか、外れや破損がないかなどをきちんと確認し、水中では身体を水平に近い状態にし、水の抵抗が一番少ない姿勢を把握しましょう。

また、自分の器材をお持ちの方は潜る前だけでなく、定期的にエア漏れや破損がないかなど確認するようにしてください。

ダイビング経験を積む

身体の大きい方や肺活量がある方でも、経験値が高いとエアの消費は他の方と差がなくなるほどに変化します。

ダイビング経験を積むということはエアの消費削減に繋がります。

ちなみに筆者は、身長186cm、体重120kgの大柄な20代男性で年間80本以上潜るアクティブなダイバーとよくファンダイビングに行きますが、彼のダイビング後の残圧は毎回チームの中で誰よりも多く残っています。

潜れば潜るほど、不要なエア消費を避けるためのコツである、水中でのバランス、中性浮力、呼吸の仕方、器材の扱い方などが慣れてきます。

エアの消費だけでなく、ダイバーとしての知識やスキルがアップするので、一石二鳥ですね。

まとめ

ダイビングのエア消費量が多いことが毎回ストレスな方は、今回紹介したポイントを意識しながら、経験を積み上げていくことで解消されます。

ダイビングでエア消費量を減らすポイント

ただ、一つ認識しておいてほしいことは、初心者ダイバーがエアを消費しやすいということは悪いことではないということです。

自分のせいでダイビング時間が短くなってしまったという経験は、多くのダイバーが経験することで、迷惑をかけてしまうことは誰にでもあります。

エア消費が早い方が優先なのは、信号を守ることと同じくらい安全面では普通なことです。

そして今回のエア消費の不安は経験を積むことで解消されるので、考えすぎず、焦らずにゆっくりと自身に合うダイビングを安全に楽しんでください。

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